2010年8月16日月曜日

ソバン先生。











パリに住んでいたとき、週に一度、オリヴィエと一緒にテコンドーを習いに行っていた。


















ソバン先生はカンボジア出身の物腰のほんとに温厚なやさしい先生で、わたしたちは大好きだった。








先生のおうちに生徒が集まってバーベキューをしたとき、オリヴィエが先生の隣に座っていたら、アジア人の彼女は人当たりはいいけれど一筋縄じゃいかないだろう?なんでも相談にのるからね、と言ってもらったらしい。








その日、先生はわたしに、若いときにカンボジアからフランスへきたけれど、以来、一度も帰っていないと言った。家族も親戚も、消息を一切とることができなかった、と言った。なにも言えなかったし、そういうことをこれからもずっと抱えて生きて行く人生を想像すると今でも言葉にならないけれど、そういうひとがこの世にはきっとたくさんいる。ということを、八月はおもう。