2011年12月24日土曜日

beautiful math












今年読んだ本で格別におもしろい!と思ったのが、トム・ジーグフリードの「もっとも美しい数学 ゲーム理論」。読み終えるのが惜しくて後半部分をすこし残してあるから、休暇で読みたい予定です。


小さいころ大人の矛盾を見かけると、子供の自分にはわからないけれどきっと大人になれば分かるはずだ、矛盾に見えても大人はフツウにやりすごしてるんだからと考えていました。それを自分は「世界のからくり」とか「この世のからくり」と名付けていて、大学にでもいったら教わるものなんだろうと思っていた。
大人は子供に「嘘をついてはいけない」としつこく言うのに、大人こそ平気で嘘をつくし、まわりの大人もそれを普通に見てみぬふりする。世界で飢えているひとがいるから助けようとチャリティをテレビでしてみんなで泣くのに、一方で食糧を大量廃棄する。などの不思議&矛盾。大人が知ってるらしいそのからくりを知る日が楽しみでした。


そういうこの世のからくりみたいなものに触れ得るのがナッシュのゲーム理論なのかと読みました。人間は古くから、自然界の本質をとらえる「自然の法典」というものを探そうと努力してきたそう。この本はゲーム理論が「森羅万象を解き明かす究極理論となるか」その可能性を探索しています。




あまりにおもしろかったので本文のメモ。


作家アイザック・アシモフが1950年代に書いたSF小説「ファウンデーション」の中に出てくる数学者ハリ・セルダン。彼は心理歴史学という数学体系を使って、人々の動きを探り出そうとする。

(以下、本文22pより)
数学者ハリ・セルダンが、統計力学に触発されて心理歴史学を生み出した。。。ハリ・セルダンは、気体分子運動論をモデルとして、心理歴史学を作り出した。気体の原子や分子は、それぞれまったくでたらめに動いているから、特定の粒子の速度や位置を知る術はない。しかし統計学を使うと、気体全体としてのふるまいを決めている法則を、かなり正確に探り出すことができる。セルダンは、これと同じやり方で、人間社会全体としてのふるまいを探り出そうとしたんだ。その解を個々人のふるまいに当てはめることはできない、と承知の上で。



ほかにも抜粋。



(28p)人間の脳は、不思議なくらいみごとに、現実の奥深いところにある真実の側面をとらえる数学を作り出す力を持っており、科学者たちが、非物質やブラックホールといった風変わりなものが観察される前にこれらの存在を予言できたのも、この力のおかげである、と。



(52p)ペイリーを有名にしたのは、時計職人の比喩だった。1802年にペイリーが記したところによれば、かりに地面に時計が落ちていたとすると、あなたには、それが岩とはまったく違うものだとわかるはずだ。時計の部品は明らかに、「なにか目的があって集められ」、「規則的に動いて、今が一日の何時なのかを指し示すように」調節されている。つまり、。。。否応もなく、「その時計には作り手がいるはずだと推論せざるを得なくなる…その作り手には時計の構造が理解できていて、その用途に応じて時計を設計したのだ」と。ペイリーによれば、生物界にこれほど数多くの複雑だが整然とした生き物があふれ、それらがみな、みごとに適応して効率的に生きていけるようにできているという事実から見ても、これらはなにか精妙な設計の結果作られたものに違いない、つまり設計者がいるはずなのだ、ということになる。



(104p)均衡ないし平衡は、科学の多くの分野において、非常に重要な概念である。均衡とは、物事のバランスが取れていること、あるいは安定していることを指す言葉で、しかも安定性という概念は、自然過程を理解する上で不可欠。。。化学系であろうと、物理系であろうと、そして社会制度であろうと、あらゆるシステムは安定しようとする。。。。物事の流れがどこに向かおうとしているかが分かるのである。



(129p)実際、噂話そのものが、現実世界がゲーム理論に従った結果生まれてきた、重要なものだということが判明した。なぜなら噂話こそが、人間の社会的な行動を理解するうえで鍵となるものであり、人間がジャングルでの利己的な生存競争の苦闘から抜け出して文明を打ち立てることを可能にした自然の法典を理解するうえでも、ポイントとなるものであるからである。。。。



(144p「見物人」「見物」という行為について)
実際鳥の中にも、(そして魚の中にも、)ボクシングファンやサッカーファンのように、グループの中の二匹が戦って戦い抜くのを見物するのが好きな鳥がいる。ひょっとすると、現代社会にかくも暴力があふれているという事実を説明する鍵は、この、暴力を目の当たりにしたいという欲望にあるのかもしれない。





時間切れ。もっとメモりたかった。